定点観測することの力

「〜先生の次回作にご期待ください」の集大成。
素晴らしい。これが正しいかどうかは知らないけど、こういう観点を持って作品を眺めると楽しそうだ。

富野由悠季本人はガンダムオタクと違い、「ジークジオン!」というナチズムのノスタルジックなカッコよさに30年以上も遊んでいるガンダムファンと違い、丘の向こうの未来を作品で模索していたようである。
①宇宙植民時代を描いたイデオン

②人類が絶滅して新人類が生まれたあとのザブングル

③ファンタジーと冷戦核戦争の融合したダンバイン

④戦争商人を描いたエルガイム

⑤現実認知の機動戦士Zガンダム

⑥未来の象徴であったスペースコロニー制度が経年劣化したガンダムZZ

⑦変わらない愚民どもへの絶望と諦めに似た希望の葛藤を描いた逆襲のシャア

⑧民主主義に抵抗する貴族主義革命を描いたF91

⑨地球連邦民主主義が瓦解して地域紛争が続く宇宙戦国時代の宗教戦争を描いたVガンダム

⑩自然災害と資源の枯渇で地獄となった地球で科学と絆を使って生き延びようとする人々を描いたブレンパワード

⑪遠大なる過去の黒歴史の重みと呪いを受け止めた上で健やかさに回帰しようとする∀ガンダム

⑫管理社会の崩壊すら予定に組み込まれた未来世界で一人ひとりが人生を謳歌しようとしたキングゲイナー

第二次世界大戦から冷戦を経て21世紀のグローバリゼーションとテロという現代の問題をファンタジーの手法でひと続きにまとめたリーンの翼

富野は30年以上、常に丘の向こうの未来に何があるのか、もがき続けてきた。だからかっこいい。(実際の成果が出たかどうかは、所詮は虚構ですが)

http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20130126/1359129677

定点観測の結果見えてくるものがあるということは
1月の新年会で少しその片鱗を味わうことができた。

その時は、西森博之先生の「SPIN OUT」という作品を西森作品の系譜の中に位置づけることでその狙いを捉えるというものだった。
単体で読んだら「なにをやりたいのかわからない」「全然話が盛り上がらない」「話が始まる前に打ち切りになったように見える」という散々な作品であると感じたものだけれど、系譜としての位置づけを考慮するとこれがかなり面白くなるから不思議。SAOやなろう小説が大人気になり、「エデンの檻」が続いてる今ならもしかしたら、描き方次第ではずっと続いて大作になったかもしれないとかいろいろ想像できる。
また、この作品が失敗だったとしても、その後の西森作品はしっかりとその自分の問いを持続して作品に反映しているということがわかるので、また面白い。


そういえば我らが岩崎夏海大先生も定点観測の力を強調されている。
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar29504

定点観測や系譜を眺める縦の視点の重要性を理解されている岩崎さんは「エースの系譜」という作品も発表されている。*1


実際の成果を見せられると、定点観測の強力さは伝わってくるのだけれども、その「定点観測のテーマ・問い」をどうやって持つかがよくわからない。岩崎さんの場合は「本に書いてあった視点を自分なりに工夫して実践した」であり、SPIN OUTについて語ってくださった方の場合は「膨大な数を見ているうちにふと思いついた」であり、いまひとつとらえどころがない。まぁそういうものなのかもしれないけど。


nuryougudaさんはガンダムについてどういう経緯で「富野のテーマ」を自分なりにえぐりだしたのだろうか。そこが気になります。



追記:回答いただきました。

今回書いたのは単なるあらすじですが。テーマは10回くらい見たらなんとなく主観的に想える感じです

そうですか・・・。富野作品を縦につなぐテーマとして「30年以上、常に丘の向こうの未来に何があるのか、もがき続けてきた」と表現されたことをさして、nuryougudaさんは富野作品にこういうテーマを見出したのだな、と解釈したのですがそういうわけでもないのかな。




とりあえずまおゆう楽しんだ人間としては、5年後くらいに

http://d.hatena.ne.jp/izumino/20101230/p1
http://d.hatena.ne.jp/pushol_imas/20101227/1293464415

とかログ・ホライズンも読んで、もっと作者のことを理解して、系譜のひとつとしてのまおゆうについて語ってる人とか、あるいはドラクエSSの系譜やらのなかの位置づけとしてまおゆうを評価するだとか、いろんな意見を読める息の長い作品になっていただければとおもいます。

*1:あれ実は3部作のうちの1作目らしいですね。二作目のタイトルは「黄金時代」。三作目のタイトルは秘密。ぶっちゃけ私には一作目の「系譜」が死ぬほどつまらなくて小説とよむべきかどうかもわからないクソだったのですが、面白いと言ってる人も多いので多分私は岩崎さんに対する定点観測が足りないのだと思われる。修行するぞ、修行するぞ