女の人が「ただ話を聞いてほしいだけ」という時に男の人が求められていること

男女関係に関する本を読んだ。

男女関係の話なので、もちろん話題自体は聞いたことがあるような物ばかりだ。しかし女性週刊誌にありがちな「男はこうするべき」「女はこうするべき」より確実に1〜2段階掘り下げて語られている感じがある。また、はてなや増田で語られるような極端な事例をむりやり一般化して男や女を語るという乱暴さがあまりないように見える。

身近にあってよく知っている「つもり」の話題について少しだけ踏み込んだ部分を教えてくれたりや、あるいは身近にあって気にはなっているけどよく知らないことを丁寧に説明してくれたりするものは、間違いなく楽しいのだろう。


たとえば女の人の愚痴の話。

ネットの記事とか読んでると「女の人はただ聞いてほしいのです。解決策を言うのをやめて、ただ耳を傾けてあげましょう」みたいなアドバイスがゴロゴロ転がっている。

みんなこの決まりきった言説自体は知ってる。なんとなく正しいような気もする。でも、実際このアドバイスだけを愚直に実行してみて状況が改善した例は少ないような気がする。




これについて、この本で書いてることを「解凍」してみた。


1 女の人はもちろん「問題」を解決したいとは思っている。ではこの「問題」とは何か、ここで認識の違いが生じやすい。



2 男の人は、彼女の感情を乱している状況それ自体(問題F)を問題と考え、問題Fに対する解決策を提案することによってその感情をたてなおさせようとする。しかし女性が男性に向けて相談したい問題とは問題Fのことではない。



3 女性が気にしていることがら(問題T)とは、問題Fに対処しようとするときに感じている心細さや不安、憤りなどの感情であり、それが問題Fに対処することを阻害している要因である。彼女たちは問題Tに対する対応において、貴方の関与を求めている。

この段階で求められるのは「感情のケア」であったり、「本人も十分に自覚できていないでもやもやしている問題Tを具体化・明確化すること」である。この部分が「話を聞いてほしいだけ」という言葉で表現されるものである。 

そのため、単純に頷いたり相槌をうっているだけで解決することも多いが、それだけではいつまでたっても解決しないことがある。 

しかし、ソレ以上に絶対にやってはいけないのは、この時点で問題Fの話をすることである。「解決策」の話をしなくても同じだ。今問題になっているものが何か、を取り違えることだけはやってはいけない。





4 女性にとって、問題Tが残っている間、問題Fはそれほど重要ではない。少なくとも女性が「今」気にしているのは問題Tである。問題Tが問題Fを完全に覆い隠しているため、この状態で問題Fに目を向けろと言ったところで、そもそも理解できない。




5 本当は問題Fが問題であったとしても、女性がそれを意識するのはあくまで問題Tが解決してからである。 問題Fに対するアドバイスが必要とされ、求められるのはこの時である。 この時に問題Fの解決策を提示すれば、女性は喜んで受け入れる。

女性は「解決策」が要らないのではない。今話をしている問題が何であるかを相手が正しく認識しているかどうかを確認したい、確認せずにはいられないのである。 確認ができないと不安になり、解決策が上から目線の命令に聞こえてしまうのである。




EX 女性はタテよりもヨコのコミュニケーションに馴染みやすい。ヨコの関係において「共通点の確認」「相手に理解を示すこと」はより重要である。ひとつひとつ確認しなければ話を進められない。 そして、ヨコの関係に慣れているかわりにタテの関係を前提としたコミュニケーションに不慣れだと、「先に結論から話す」「要点から話す」というコミュニケーションの省略(効率化)に強いストレスを感じるらしい。




6 男性が女性との会話で気をつけるべきことは、コミュニケーションを省略しないこと。女性がどういうステップで考え、話をし、決断するかを理解した上で、それにつきあうことだ。 最初は根気強く女性の話のすべてのステップに付き合うことで女性への理解を示し、信頼を得ることが重要である。 付き合いの間で信頼関係を築くことが出来れば相手との合意の上でステップを省略することも可能だろう。

理屈はともかく、求められているのは「途中で自分の意見を挟まずに女性がいうことは全部聞いとけ」ということである。 「ただ話を聞いてほしいの」から推測されるいう言葉と変わらないといえば変わらない。


ただ、こういう理屈を理解しておかないと「なぜ女性は頭から逐一、こちらが知る必要のなさそうな話まで長々とするのか」ということがわからない。何を意識しながら聞けばいいのかわからない。そもそも何を求められているのおかわからない。 話をきいてる間、どんな顔をすればいいのかわからないの…。 で、どっかでイライラしてしまう。こちらだけが我慢してるような気分になってしまう。どこかで爆発してしまう。*1

でも、こういう理屈を知っておけば、自分が相手の役に立っていると実感しながら話を聞けるだろう。 そもそも男性がついつい女性の話に解決策を言おうとするのは悪意やコントロール欲求のためではなく「相手の役に立ちたいから」なのだ。相手が求めていることがわからないから、相手の役にたつと思うことをやろうとした結果のスレ違いである。この悲劇を避ける意味でも、上記のような考え方は知っておいてよかったとは思う。



だから、知っておくことには意味がある。あるとは思うのだ
・・・が、めんどくさいよね、どう考えても。
いちいちこんな理屈意識してらんねー。





というわけで、めんどくさい話は疲れたので、もっとシンプルな話としてこの本でも読んでみようかな、と思った。

*1:余談だけれど、この話を知ったことで、私は「一行で語れるような凡庸なことを語るために、関係無さそうな無駄話まで詰め込んだ長文をダラダラと垂れ流しした挙句、一筆書きで書きましたなどどや顔でのたまうクソ記事を量産する誰かさん」の心理を少し理解できたような気がした。「友人とダベる」感覚をそのまんまネットで表現したいだけなんだな。記事に意味なんかなくて、立派な主張なんかなくて、ただ一緒にだべれる仲間を探したいだけなんだな。そんなことを「わざわざブログでやらなければいけない人」というものが理解できてないなかった。だからいつも彼の文章を読んでイライラしてた。私は、すっかり勘違いしてた。